産後1カ月は、女性の一生涯の健康に大きく影響する時期です

産後の過ごし方に関しては、出産するご本人と、女性だけでなく家族全員で考え方や対策を共有することが大切になります。

核家族化が進み、物理的に産後を支えてくれる身内女性や社会的理解が乏しいのが現状です。また、実際にはどのようなサポートが必要なのか、妊娠出産した本人からは伝えにくいと感じています。

歴史的背景を含めてできるだけ情報を整理して説明したいと思います。

母体への出産のダメージと過ごし方

まず、出産を終えた女性の身体は「全治1カ月の交通事故による損傷と同じ」とたとえられますように、一見平静に見える産後の母親の身体が想像以上にダメージを受けている状況は想像できますでしょうか。

身体的には、妊娠出産で負荷がかかった骨盤及び骨盤底筋群など、全身がもとの状態に戻るのには6〜8週間と言われています(帝王切開で経膣分娩でも)。

では具体的にどう過ごしたら良いのか?ということを説明します。

産院でも、出産後比較的早期に歩行を開始しますが、積極的に負荷をかけて動いていきましょう、ということではありません。

赤ちゃんのお世話以外、極力目を使わず、静かな環境でゆっくり横になって過ごしましょう(重いものを移動したり、おむつを洗ったり哺乳瓶を洗ったりすることも家族や支援者にお願いしてください)ということなのです。

産後は気持ちだけは前のめりになりますが、この時期だけは、「できるけどやらない」ということを心に決めてほしいと思います。

産後は血・気・陰を補う大切な時期

次に歴史的に、産後がどのように考えられてきたかをみてみます。

祖父母世代から「床上げまで(産後21日間)は栄養をとりゆっくり休む。産後に無理をすることは、その後の女性の一生涯の健康に影響を及ぼす」などと言われてきました。

2000年の歴史がある中医学でも、産後は「三虚」の状態と言われ、血・気・陰を補う時期とされ、大切に考えられてきました。

整体協会創始者の野口晴哉氏は、今のような医療がない時代から、さまざまな人の骨格に直接触れ、観察してきた中で、妊娠〜産後の生活の仕方について以下のように詳しく述べています。

産後開いた骨盤が元に戻っていく時に無理をすると、骨盤がアンバランスのまま固まってしまう。そして、骨盤の歪みは、骨格のみならず、全身の臓器に影響を及ぼす。

整体協会創始者の野口晴哉氏の言葉より

見方を変えれば、出産により骨盤が一度リセットされる時が、骨格のレベルでアプローチできるチャンスでもあり、産後の養生は最大の美容法、健康法ともいえるのかもしれません。

医学が進歩し、自然環境や考えが多様化しても、歴史的に人間の身体の仕組はそれほど大きく変化していません。

産後の「わたし」を労わることは、赤ちゃんを育む土台をつくります。

土台があるから母子ともに健やかに過ごすことができるのです。

夫の亡き祖母が、初孫の誕生にあたって、夫宛てに書いた手紙です。

『親も何もしないで、出来てもさせない。ゆっくり体をやすませる。産後は女にとって一番大事なんだからね』

このことばは、母となった私の健康の土台となっています。

当助産院は、「人間形成の土台づくりに貢献していく」という理念のもと、「周囲の環境と文化を活かし、日々研究と実践を重ねていく」という想いをこめて「こどもとくらし研究室」と名づけました。あたためてきた想いと、積み重ねてきた経験をかたちにして、縁ある方々の手から手へ、お届けしたいと思います。